解離って耳慣れない言葉です。多重人格の話は聞いたことがあるかもしれません。多重人格は解離の症状です。解離は日常誰にでもみられます。例えば、好きなゲームを夢中になってしている時 親が注意をしてもゲームをやってる本人には聞こえないことがあります。自分の意識からゲーム以外の意識が切り離された状態、これが解離と言われる意識変容状態です。
また、自転車を運転しているときはペダルをこいでることを意識しないで乗っている。ペダルをこぐ行為が自分の意識から切り離されています。これも日常で見られる解離です。またスマホをしながらの事故も解離によるものかも知れません。
解離が日常生活に支障をきたすことがあります。解離によって本人や周りに人々に辛い思いをさせる場合は治療が必要です。人格と意識が切り離されてバラバラになっている状態です。解離は神経症的防衛(防御機制)のひとつで苦痛などによる不安を軽減するために無意識に自分のパーソナリティーを一時的に一部変更します。
ピエール・ジャネという精神科医(ヒステリーの研究)で心理学者の著書「心理自動症」で「ある種の心理現象が特殊な一群をなし忘れ去られるかのような状態」を「解離による下意識」と命名してから始まっています。ジャネは最初は解離を夢遊病の典型と考えていました。ジャネは解離が治療されることを著書で「精神的解毒」と言っています。フロイトは「解離」を二重意識と呼んでいました。フロイトは解離を治療されることを除反応とかカルタシスとかとよんでいました。20世紀の初め頃は解離のことを解離ヒステリーと呼ばれた時期もありました。
原因は心因性といわれています。
解離しやすい素質を持っている(さいみんや暗示がかかりやすい人・何もないのに何かを感じやすい人)
心的外傷(トラウマ)
若い時に受けた性的・身体的虐待は後で起こる解離とは密接な関係があるといわれています。
幼児期に何度も繰り返し受けた受けた心的外傷は1度だけ受けた心的外傷より解離しやすいです。
幼児期に受けた虐待時における解離はあまりにひどいトラウマチックな出来事に対する防御機制(これ以上自分が傷つかないように自分の心と身体を守るための)であります。
PTSDの患者は他の精神疾患の患者より催眠がかかりやすい
心的外傷を体験した成人は心的孤立感、隣人症・現実感喪失などの、解離現象を体験したことがある場合がみられます。
ひとつの原因だけでなく複合的に起こることもあります。
解離性同一性障害DIDの原因
Kluftの4因子説
1)暗示にかかりやすいこと
2)幼児期に性的虐待などの心的外傷が加わる。
3)解離の防衛をとることにより多重人格を形成するような、核になるような体験がある
4)親がDIDになることを阻止するような養育的態度をとらなかった。
ストレスの要因
いじめ・人間関係(例。自分の気持ちを押さえて周りにいい子に振る舞ったり)・虐待(性的虐待・身体的虐待・ネグレクト)・事件・事故など
症状 記憶喪失
意識喪失
痙攣(けいれん)
自動症(自分の気持ちと関係なく身体が勝手に動く)
自分が誰であるかわからない。
幻が見える。(統合失調症のとは違う)
空想への没入
記憶の曖昧さ
意識狭窄
もうろう状態
知覚の欠損
見えない、聞こえない、立てない、歩けない、声が出ない感情がわいてこない
隣人感(現実感がなく自分の問題なのに他人事のように傍観している。自分の体が自分のものではないかんじ)
交代現象(主体が霊・動物。他人のように振る舞う)
普段と違う能力・態度をしめす。年齢が著しく変化したようにふるまう。
憑依(ひょうい)・宗教性トランス
では解離で代表的な疾患が解離性障害です。
厚生労働省のホームページの解離性障害について(下記)
解離性障害とは
私たちの記憶や意識、知覚やアイデンティティ(自我同一性)は本来1つにまとまっています。解離とは、これらの感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。たとえば、過去の記憶の一部が抜け落ちたり、知覚の一部を感じなくなったり、感情が麻痺するといったことが起こります。ただ、解離状態においては通常は体験されない知覚や行動が新たに出現することもあります。異常行動(とん走そのほか)や、新たな人格の形成(多重人格障害、シャーマニズムなど)は代表的な例です。これらの解離現象は、軽くて一時的なものであれば、健康な人に現れることもあります。 こうした症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。原因としては、ストレスや心的外傷が関係しているといわれます。この心的外傷には様々な種類があります。災害、事故、暴行を受けるなど一過性のものもあれば、性的虐待、長期にわたる監禁状態や戦闘体験など慢性的に何度もくりかえされるものもあります。 そのようなつらい体験によるダメージを避けるため、精神が緊急避難的に機能の一部を停止させることが解離性障害につながると考えられています。
解離性障害の症状
解離性障害には様々な症状があります。世界保健機構の診断ガイドラインICD-10では、解離性障害のカテゴリーには次のようなものがリストアップされています。
解離性健忘:ある心的ストレスをきっかけに出来事の記憶をなくすものです。多くは数日のうちに記憶がよみがえりますが、ときには長期に及ぶ場合もあります。
解離性とん走:自分が誰かという感覚(アイデンティティ)が失われ、失踪して新たな生活を始めるなどの症状を示します。学校や職場において極度のストレスにさらされ、しかもそれを誰にも打ち明けることができない状態で突然始まり、それまでの自分についての記憶を失うことが多くみられます。
カタレプシー:体が硬く動かなくなること。
解離性昏迷:体を動かしたり言葉を交わしたりできなくなること。
離人症:自分が自分であるという感覚が障害され、あたかも自分を外から眺めているように感じられます。
解離性てんかん:心理的な要因で、昏睡状態になる、体が思うように動かせなくなる、感覚が失われるなどの症状が現れます。
ほかにも、ヒステリー性運動失調症、ヒステリー性失声症、解離性運動障害、失立、心因性失声、心因性振戦、解離性痙攣、憤怒痙攣、解離性感覚障害、心因性難聴、神経性眼精疲労、ガンサー症候群、亜急性錯乱状態、急性精神錯乱、心因性もうろう状態、心因性錯乱、多重人格障害、反応性錯乱、非アルコール性亜急性錯乱状態なども解離性障害の一種です。
多重人格障害:これらの中でも多重人格障害はDSM(アメリカ精神医学会の診断ガイドライン)では解離性同一性障害と名づけられ、きわめて特徴的な症状を示します。患者は複数の人格をもち、それらの人格が交代で現れます。人格同士はしばしば、別の人格が出現している間はその記憶がない場合が多く、生活上の支障をきたすことが多くなります。
これらの解離性の症状は、それを周囲に理解し、信じてもらうことが困難な場合も少なくありません。とくに疾病利得が絡んでいる場合には、詐病ではないかと疑われることもあります。また専門医でも、その診断が難しいケースもあります。 解離性の障害を理解するうえで重要な点は、過去にこれらが解離という言葉を用いられずに、様々な形で精神医学の関心の対象となってきたことです。文化結合症候群(特定の文化に特有の精神医学的疾患)という一連の精神障害がありますが、そこで記載されているもののほとんどすべてが解離性の障害と考えることができます。
(抜粋終わり)