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パニック障害と脳:なぜ不安は止まらないのか?

更新日:15 時間前

パニック障害と脳の関係で、より深く関与していると考えられるものから順にまとめました。

1. 扁桃体(Amygdala)

  • 深さの理由: パニック障害の核となる症状である「恐怖」や「不安」を司る中枢そのものです。パニック発作時における身体的な恐怖反応(動悸、呼吸困難など)の引き金となると考えられており、過活動が最も直接的な原因とされています。脳機能画像研究でも、パニック障害患者において扁桃体の過活動が報告されています。

  • 主な役割: 恐怖、不安、怒りといった情動の処理、危険を察知し、それに対する身体的反応(警報装置)

2. 海馬(Hippocampus)

  • 深さの理由: 扁桃体と密接に連携し、特に「予期不安」や「回避行動」というパニック障害特有の症状の形成に深く関わります。一度パニック発作を経験した場所や状況を「危険な記憶」として固定し、それが再び発作を誘発する引き金となります。記憶と感情の結びつきにおいて中心的役割を果たします。

  • 主な役割: 記憶の形成(特に情動を伴う記憶)、場所の記憶

3. 神経伝達物質(特にセロトニン、ノルアドレナリン、GABA)

  • 深さの理由: 扁桃体や海馬を含む脳の各部位の働きを調整する「情報伝達物質」であり、これらの物質のバランスの乱れが、脳機能の異常、ひいてはパニック障害の症状を直接的に引き起こします。多くの治療薬(SSRIなど)がこれらの神経伝達物質の調整を目的としていることからも、その重要性がうかがえます。

    • セロトニン: 気分や不安の調整に関わり、不足や機能異常が不安を高めます。

    • ノルアドレナリン: 覚醒、ストレス反応、交感神経活性化に関わり、過剰な分泌がパニック発作の身体症状を引き起こします。

    • GABA: 脳の興奮を抑制する作用があり、機能低下が不安を高めます。

4. 前頭前野(Prefrontal Cortex)

  • 深さの理由: 扁桃体の過剰な活動を抑制し、理性的な判断や情動のコントロールを行う「ブレーキ役」です。このブレーキが効かないことで、パニック発作がエスカレートしたり、予期不安をコントロールできなくなったりします。上位の脳機能として、恐怖反応の抑制に重要な役割を果たします。

  • 主な役割: 情動のコントロール、意思決定、理性的な思考

5. 青斑核(Locus Coeruleus)

  • 深さの理由: ノルアドレナリンの主要な産生部位であり、パニック発作時の激しい身体症状(動悸、息切れ、発汗など)に直接的に関与します。扁桃体と連携し、恐怖反応を増幅させる可能性があります。

  • 主な役割: ノルアドレナリン分泌、覚醒、注意、ストレス反応

6. 視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)

  • 深さの理由: 慢性的なストレス応答を司るシステムであり、長期的なストレスが脳の機能に影響を与え、パニック障害の発症や悪化につながる可能性があります。直接的なパニック発作の引き金というよりは、発症のリスクを高める要因としての関与が大きいです。

  • 主な役割: ストレスホルモンの分泌(コルチゾール)、ストレス応答の調節

これらの脳の部位や神経伝達物質は、それぞれが独立して機能しているわけではなく、複雑なネットワークを形成し、相互に影響し合いながらパニック障害の症状を引き起こしています。そのため、どの要素が最も重要かという単純な序列ではなく、相互の連携が非常に重要であると理解することが大切です。


taVNSについて


taVNS(経皮的耳介迷走神経刺激)は、パニック障害に関連する複数の脳領域に作用すると考えられています。パニック障害は、ストレスに関連した感情を処理する扁桃体の過活動と、行動のコントロールに関わる前頭前皮質の機能不全が原因であるとされています。

taVNSは迷走神経を介して脳に影響を及ぼし、具体的には以下の脳領域の活動を調節することで、パニック障害の症状改善に寄与する可能性があります。

  • 扁桃体(amygdala): 恐怖や不安などの感情反応に関わる主要な領域であり、taVNSは扁桃体の過剰な活動を抑制すると考えられています。

  • 前頭前皮質(prefrontal cortex): 意思決定、注意制御、問題解決などの高次脳機能に関与し、扁桃体からの過剰な警報を適切に処理する役割を担っています。taVNSはこの領域の機能を改善することで、感情の調整能力を高める可能性があります。

  • 島皮質(insula): 感情や身体感覚の統合に関わる領域で、自我が発生する場所とも言われます。

  • 中帯状皮質(middle cingulate cortex: MCC)

  • 中心前回(precentral gyrus: PrCG)

  • 中心後回(postcentral gyrus: PoCG)

  • 補足運動野(supplementary motor area: SMA)

これらの脳領域は、感情、認知、自律神経系の調節に深く関わっており、taVNSがこれらの部位の神経活動を調節することで、パニック障害の症状である不安感や身体症状の緩和につながると考えられています。








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