ひとりで出来る迷走神経調整
- yamanehari777
- 5月28日
- 読了時間: 13分
更新日:6月6日

迷走神経を調整することには、心身に様々な良い効果が期待できます。迷走神経は自律神経の一部である副交感神経の主役であり、リラックスや回復を司る役割を担っています。
迷走神経調整の主な効果
迷走神経を活性化したり調整したりすることで、以下のような効果が期待できます。
ストレス軽減とリラックス効果:
交感神経が優位な「闘争・逃走反応」を鎮め、心拍数を落ち着かせ、血圧を安定させます。
不安やパニック症状、イライラ感を軽減し、穏やかでリラックスした気分を促進します。
ストレスによって起こる筋肉の緊張や血行不良、浅い呼吸などが改善されます。
精神的な安定と心の健康:
脳内のGABA、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の放出を促し、癒しや安心感、やる気を感じやすくします。
うつ病や不安障害の症状軽減に効果があるという研究も進められています。
情動の安定に繋がり、ポジティブな感情を高める助けになります。
身体的な健康の向上:
消化機能の改善: 消化を助け、胃腸の働きを良くします。
免疫力の向上と炎症の抑制: 抗炎症作用があり、免疫反応の調節に役立ちます。
睡眠の質の向上: リラックス状態に導くことで、より質の高い睡眠を促します。
心拍数の調整: 心臓の働きを安定させ、動悸などを防ぎます。
慢性的な不調の改善: 肩こり、目の疲れ、便秘など、様々な身体の不調の改善に繋がる可能性があります。
集中力・パフォーマンス向上: 特にスポーツ選手やゲーマー、子供の集中力アップに効果が期待できるとされています。
脳機能の改善: 認知症や脳卒中後の麻痺、発達障害の改善にも関与している可能性が示唆されています。
なぜ迷走神経が重要なのか
迷走神経は、脳と内臓(心臓、肺、胃腸など)を繋ぐ重要な神経であり、「身体のOS」とも呼ばれます。感情や自律神経の調整に深く関わっており、私たちが安全や安心を感じる際に特に活発に働きます。迷走神経の働きが低下すると、ストレス耐性が弱まり、心身の不調に繋がりやすくなります。
自分でできる迷走神経の調整法は、薬を使わずに心身のバランスを整え、日々の生活の質を高めるための有効な手段と言えるでしょう。
迷走神経を自分で調整する方法はいくつかあります。ストレスを軽減し、心身のバランスを整えるのに役立ちます。以下に、一人でできる迷走神経の活性化・調整方法をいくつかご紹介します。
1. 呼吸法
深呼吸: 深くゆっくりとした呼吸は、迷走神経を刺激し、副交感神経の活動を高めます。特に、吐く息を意識的に長くすることで、より効果が高まります。
逆腹式呼吸: 息を吸う時にお腹をへこませ、吐く時にお腹を膨らませる呼吸法です。迷走神経への刺激が入りやすいと言われています。
1:2呼吸法: 3〜4秒で鼻から息を吸い、その倍の6〜8秒かけて口からゆっくりと息を吐き出す方法です。
「ふー」と息を吹く: 仕事の合間などに長く息を吐くことで、穏やかなブレーキが発動し、緊張やイライラが収まります。
「馬の呼吸」: 唇を軽く閉じたまま、思い切り息を吐き出すと、唇がブルブルと震え、口輪筋が活発に動きます。これが顔面神経を介して腹側迷走神経を刺激します。
2. 声を出す・喉を刺激する
歌を歌う、ハミングする: 迷走神経は声帯にも分布しており、歌ったりハミングしたりすることで迷走神経が刺激され、心拍数を減らし、迷走神経の働きが改善されます。
うがい: ぶくぶくと口をすすぐ際に、しっかり唇を閉じ、頬や顎の筋肉を動かすことで、喉を通っている腹側迷走神経が活性化します。「あー」「うー」など、いろいろな声を出しながらうがいするのも効果的です。
オームのマントラを唱える: ヨガなどで知られるオームのマントラをゆっくり唱えることも、迷走神経への働きかけになります。
3. 身体への刺激
冷たい水に触れる: 定期的に冷たい水に触れることで、交感神経の緊張が和らぎ、迷走神経を介した副交感神経の活性化が促されます。お風呂上がりに足に冷水をかける、顔に冷たい水をかけるなども有効です。
腎臓の位置に手を当てる: 背中の腰より少し上、背骨を挟んで左右にある腎臓の位置に両手を当てると、興奮を司るアドレナリンの分泌が穏やかになります。寝る前に横になって行うと、より効果を実感しやすいと言われています。
耳かき(優しい刺激): 外耳道には迷走神経の枝が分布しており、耳かきの裏の梵天などで優しくマッサージすることで、迷走神経が刺激されリラクゼーション効果が得られることがあります。指を耳の穴に入れるだけでもOKです。
手をグー、パー、グー、パーと繰り返す: この動作は、心臓の洞房結節を通っている腹側迷走神経を刺激すると言われています。
4. 日常生活での工夫
笑う、他者との交流: 仲の良い仲間や家族との交流は、迷走神経を刺激するのに最も適した方法の一つです。心の底から「安心」「安全」を感じると、迷走神経の働きが活発化します。
「ゆっくり動くもの」を見る: 炭酸水の泡やスノードームなどを3〜5分眺めることで、気持ちが緩むのを実感できることがあります。
温かい飲み物を飲む: カフェインの強い飲み物ではなく、白湯や温かいハーブティーなどを、温度や香り、味など、五感を使ってゆっくり飲むと、神経が休まります。
こまめに水分補給をする: 脱水は迷走神経反射を引き起こす要因の一つです。日常的に水分をしっかりと摂取することが予防につながります。特に冷たい水は迷走神経への刺激が強いことがあります。
食事をよく噛んでゆっくり食べる: よく噛むことは迷走神経や舌咽神経など、副交感神経に良い刺激を与えます。
十分な睡眠と休息: 生活リズムを整え、十分な睡眠と休息をとることは、迷走神経反射を起こしにくくするためにも重要です。
これらの方法は、継続することで迷走神経のトーン(働き)を改善し、ストレス耐性を高め、心身の健康維持に役立ちます。ご自身の体調や状況に合わせて、心地よいと感じる方法を取り入れてみてください。
迷走神経調整のセルフケア(自分でできる方法)が有効とされる症状・状態
これまでに説明した呼吸法やその他のセルフケアは、疾患の治療というよりも、心身のバランスを整え、様々な不調を軽減する目的で行われます。
自律神経失調症:
交感神経と副交感神経のバランスが崩れている状態を整えるのに役立ちます。
ストレスや不安、パニック症状:
ストレス反応を軽減し、リラックスを促すことで、不安感やパニック発作の緩和に繋がります。
慢性的な疲労、倦怠感:
副交感神経を活性化し、身体の回復力を高めることで、疲労回復を促します。
睡眠障害(不眠など):
就寝前のリラックス効果により、入眠を促し、睡眠の質を向上させます。
消化器系の不調(過敏性腸症候群IBS、SIBOなど):
迷走神経は消化器の働きを司るため、その活性化が腹部症状の緩和に貢献する可能性があります。
慢性的な痛み:
炎症の抑制効果やリラックス効果により、痛みの軽減に繋がる場合があります。
失神(神経調節性失神、血管迷走神経性失神など):
神経調節性失神は自律神経の調節異常が関与しており、その予防や対策として迷走神経の調整が間接的に有効な場合があります。
集中力や精神的なパフォーマンスの向上:
ストレスを軽減し、精神的な安定をもたらすことで、集中力や学習能力の向上に寄与します。
注意点:
セルフケアによる迷走神経調整は、あくまで自己管理や症状の緩和を目的としたものであり、特定の疾患の「治療」に代わるものではありません。もし上記の疾患の疑いがある場合や、症状が重い場合は、必ず専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
更年期障害と迷走神経の間には、非常に密接な関係があると考えられています。更年期障害の多くの症状が、女性ホルモンの変動による自律神経の乱れに起因するため、自律神経の主要な一部である迷走神経の働きが大きく関与しています。
更年期障害と自律神経の乱れ
更年期は、卵巣機能の低下に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が特徴です。このエストロゲンの減少は、脳の視床下部という部位に影響を与えます。視床下部は、女性ホルモンの分泌だけでなく、自律神経(交感神経と副交感神経)、内分泌系、免疫系、感情などを総合的にコントロールしている司令塔のような場所です。
エストロゲンの減少によって視床下部が混乱すると、自律神経のバランスが崩れ、心身に様々な不調(不定愁訴)が現れます。これが更年期障害の多様な症状の主な原因の一つです。
交感神経の過剰な興奮: ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、発汗)、動悸、イライラ、息切れ、不眠、頭痛など。
副交感神経(迷走神経)の抑制: 胃腸の調子が悪くなる、便秘、下痢、無気力、集中力低下など。
迷走神経と更年期障害の症状
迷走神経は副交感神経の主役であり、「休息と消化」の神経として身体をリラックスさせる役割を担っています。更年期に自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になりやすい状況では、迷走神経の活動が抑制され、以下のような症状が悪化したり、現れたりしやすくなります。
ホットフラッシュ・発汗: 迷走神経は体温調節にも関与しており、その機能低下がホットフラッシュの頻度や強度に影響を与える可能性があります。
動悸・不整脈: 迷走神経は心拍数をコントロールしており、その働きが弱まると動悸や不整脈を感じやすくなることがあります。
不安・イライラ・うつ症状: 迷走神経は脳とも密接に連携しており、精神的な安定に寄与します。迷走神経の働きが低下すると、不安感やイライラが増し、うつ症状に繋がりやすくなります。
不眠: リラックス状態に導く副交感神経の活動が低下することで、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
消化器系の不調: 胃腸の働きを調整する迷走神経の機能が低下すると、便秘、下痢、膨満感などの消化器症状が出やすくなります。
めまい・ふらつき: 自律神経の乱れによる血圧変動や血流悪化がめまいを引き起こすことがあり、迷走神経の関与が指摘されています。
慢性的な疲労感: 身体を回復させる副交感神経の働きが低下することで、疲労感が抜けにくくなります。
声のかすれ、嚥下困難: 迷走神経は声帯や嚥下(飲み込み)にも関わっているため、その機能低下がこれらの症状に影響することもあります。
迷走神経調整による更年期症状へのアプローチ
迷走神経の活性化は、更年期に乱れがちな自律神経のバランスを整え、様々な症状を緩和するのに役立つと期待されています。
リラックス効果: 深呼吸、瞑想、ヨガ、アロマセラピーなどは迷走神経を刺激し、リラックス効果を高めます。
炎症抑制: エストロゲン減少は炎症リスクを高めますが、迷走神経の活性化は抗炎症作用を持つため、この面でも症状緩和に寄与する可能性があります。
精神的安定: 迷走神経を活性化することで、不安やイライラが軽減され、精神的な安定に繋がります。
消化機能の改善: 迷走神経を刺激する食習慣(よく噛む、発酵食品を摂るなど)は、消化器系の不調緩和に役立ちます。
具体的な方法例:
深呼吸、腹式呼吸: 特に息を長く吐くことを意識する。
ハミング、歌を歌う、うがい: 喉を刺激し、迷走神経を活性化する。
冷水刺激: 顔を冷たい水で洗う、冷たいシャワーを浴びる(短い時間から)。
瞑想、マインドフルネス: 心を落ち着かせ、自律神経のバランスを整える。
適度な運動: ウォーキングやヨガなど、リラックス効果のある運動。
質の良い睡眠: 迷走神経の働きを助け、身体の回復を促す。
更年期障害の症状は多岐にわたるため、迷走神経調整は対処法の一つとして非常に有効です。ただし、重症な場合は、婦人科医によるホルモン補充療法や漢方薬などの専門的な治療と併用することも重要です。
星状神経節近傍レーザー照射(SGLS: Stellate Ganglion Laser Irradiation System)は、主にペインクリニックなどで自律神経の調整を目的として行われる治療法であり、迷走神経とは直接的に作用する神経が異なりますが、間接的な関連性や、治療時に迷走神経に影響を与える可能性が指摘されています。
星状神経節とは
星状神経節は、首の付け根、第6頸椎から第1胸椎の高さに位置する交感神経の集合体です。この神経節は、頭部、顔面、上肢、そして心臓や肺などの胸部臓器の一部に分布する交感神経を支配しています。星状神経節ブロック(注射による局所麻酔薬の注入や、SGLSのようなレーザー照射)は、この交感神経の働きを一時的に抑制することで、様々な症状の改善を目指します。
主な効果:
血流改善: 交感神経が血管を収縮させる作用を持つため、その働きを抑制することで、頭部や上肢の血流を改善します。
自律神経バランスの調整: 交感神経の過剰な興奮を抑え、副交感神経(迷走神経も含む)とのバランスを整えることで、自律神経失調症の症状緩和に繋がります。
痛みや炎症の抑制: 神経ブロックによる鎮痛効果や、血流改善による炎症物質の除去などが期待されます。
迷走神経とは
迷走神経は、脳神経の一つで、主に副交感神経の働きを司る神経です。脳から出て、心臓、肺、胃腸、肝臓など多くの内臓に分布し、消化、心拍、呼吸、炎症反応など、生命維持に不可欠な機能を調整しています。リラックス、消化促進、心拍数の低下、抗炎症作用など、身体を「休ませる」役割を担っています。
星状神経節近傍レーザー照射と迷走神経の関連性
間接的な自律神経バランスの調整: 星状神経節近傍レーザー照射は、交感神経の活動を抑制することで、相対的に副交感神経(迷走神経)の活動を優位にさせ、自律神経全体のバランスを整える効果が期待されます。つまり、直接迷走神経を刺激するわけではないですが、交感神経を抑制することで結果的に迷走神経が働きやすい環境を作る、という間接的な関連性があります。
解剖学的な近接性による影響の可能性: 星状神経節は頸部に位置しており、その近傍には迷走神経も走行しています。そのため、星状神経節ブロック(特に注射によるもの)の際に、意図せず迷走神経に影響を与えてしまう可能性が指摘されています。
例えば、星状神経節ブロックの合併症として、一時的な声がかすれる(嗄声)、嚥下困難(唾が飲み込みにくい)などが報告されることがありますが、これは迷走神経の枝である反回神経や舌咽神経に影響が及んだ可能性が考えられます。
ごく稀に、迷走神経反射による高度徐脈(心拍数の著しい低下)や失神といった重篤な症状を合併する可能性も、星状神経節ブロック施行時に言及されることがあります。これは主に、局所麻酔薬の誤注入や、注射針による直接的な刺激が迷走神経に及んだ場合などが考えられます。
レーザー照射の場合は、注射による物理的な刺激とは異なるため、直接的な迷走神経への影響は注射ほど大きくはないと考えられますが、強い照射や広範囲への照射の場合には、周囲の神経組織に熱影響などが及ぶ可能性はゼロではありません。
まとめ
星状神経節近傍レーザー照射は、主に交感神経の抑制を目的としています。
その結果として、自律神経全体のバランスが整えられ、相対的に迷走神経(副交感神経)が優位になることで、様々な心身の不調が改善されると考えられます。
ただし、解剖学的な近接性から、治療時に迷走神経に間接的な影響を与える可能性も考慮されます。
迷走神経の働きを直接的に高めることを目的とするのであれば、深呼吸、ハミング、冷水刺激、歌唱などのセルフケアや、難治性てんかんやうつ病などに対しては医療機関で行われる迷走神経刺激療法(VNS)が挙げられます。
当院では耳介療法や、左耳の電気パルスなどで迷走神経調整をしています。
又星状神経節近傍レーザー照射も行っています。
セルフより有効な場合があります。いつでもご相談にのります。
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