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怒りが止まらないあなたへ:今すぐ試したいセルフケア

怒りを鎮めるためのセルフケアは、アンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合うための心理的なトレーニング)の考え方に基づいています。いくつか具体的な方法をご紹介します。


1. 6秒ルール


怒りの感情のピークは、およそ6秒間と言われています。カッとなったら、まずこの6秒間をやり過ごすことに集中します。

  • 数を数える: 心の中で1から6まで数える、または10まで数える。

  • 深呼吸をする: ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出す腹式呼吸を数回繰り返す。吐く息を長くするのを意識すると、副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。

  • その場を離れる: 一旦その場所から離れて、気分転換をする。トイレに行く、水を飲みに行くなど。

  • 意識をそらす: 窓の外を見る、スマホを見る(猫の動画など、気持ちが和らぐもの)、何か別のことを考えるなど、怒りの対象から意識をそらします。


2. 落ち着ける行動をとる


怒りの感情に飲み込まれそうになった時に、意識的に気持ちを切り替える行動をとります。

  • リラックスできる飲み物を飲む: 温かいコーヒー、ハーブティーなどをゆっくりと味わう。

  • 体を動かす: 軽いストレッチをする、その場で足踏みをする、可能であれば散歩に出かける。

  • 好きなものに触れる: 好きな音楽を聴く、アロマを焚く、好きな本や漫画を読む、など、自分が心地よいと感じるものに触れます。

  • 瞑想・マインドフルネス: 呼吸に意識を集中したり、五感で感じるものに意識を向けたりすることで、今この瞬間に集中し、怒りの感情から距離を置きます。


3. 認知の歪みを修正する


怒りの背景には、「~すべき」「~であるべき」といった rigid な考え方(認知の歪み)が潜んでいることがあります。

  • 「べき」思考を緩める: 「人はこうあるべきだ」「自分はこうすべきだ」といった考え方に縛られすぎていないか見直します。価値観は人それぞれであることを理解し、他者との違いを受け入れる努力をします。

  • 客観的に状況を見る: 怒りを感じた出来事を、感情を抜きにして事実のみで捉え直す練習をします。紙に書き出すことも有効です。


4. 感情を記録する(アンガーログ)


自分がどのような状況で、何に対して、どのくらいの強さで怒りを感じるのかを記録することで、自分の怒りのパターンやトリガーを理解します。

  • いつ、どこで、何があったか(事実のみ)

  • その時、どう思ったか、何を感じたか

  • 怒りの強さ(10段階評価など)

これを記録することで、客観的に自分の怒りを見つめることができ、対処法を考えるヒントになります。書き出した後、その紙を丸めてゴミ箱に捨てることで、怒りの感情も一緒に捨てるイメージを持つこともできます。


5. 自分を癒す言葉を唱える(コーピングマントラ)


自分を落ち着かせる「合言葉」を事前に用意しておき、カッとなった時に心の中で唱えます。

  • 例:「大丈夫」「落ち着こう」「深呼吸」「気にしない」「私なら乗り越えられる」など、自分が落ち着ける言葉を選びます。

これらのセルフケアは、日頃から実践することで、怒りの感情に振り回されることなく、冷静に対処できるようになります。怒りが慢性的なストレスになっている場合は、専門家や当院への相談も検討してみてください。


当院で実施している怒りを鎮めるキネシオロジー


キネシオロジーは、筋肉の反応を通して心身の状態を読み解き、バランスを整えるホリスティック(全体的)なアプローチです。怒りの感情も、心身の不調や特定の筋肉の緊張として現れると捉え、それを解放することで怒りを鎮めることを目指します。

キネシオロジーにおける怒りの鎮め方には、以下のような特徴的なアプローチがあります。


1. 筋反射テストによる原因の特定


キネシオロジーでは、特定の質問や思考、体に触れることで筋肉の反応(筋反射)を観察します。怒りの感情に対しても、その原因となっているストレス要因や、関連する身体の部位(例えば、怒りを感じると硬くなりやすい胸部や臀部の筋肉など)を筋反射テストで特定していきます。これにより、表面的な怒りだけでなく、その奥にある潜在的な感情やストレス源にアプローチすることが可能になります。


2. 感情ストレス・リリース(ESR)


キネシオロジーでよく用いられるテクニックの一つに、**「感情ストレス・リリース(Emotional Stress Release:ESR)」**があります。これは、ストレスや感情的な負担を感じた際に、おでこに手を当てることで、本能的に脳を落ち着かせようとする人間の動作を応用したものです。

  • やり方:

    1. 怒りを感じる出来事や、その時の感情を心の中で思い浮かべます。

    2. 両手のひらや指先を、おでこの眉毛と髪の生え際の間の、最も出っ張っている部分(前頭隆起)に軽く当てます。

    3. そのまま、ゆっくりと深呼吸を繰り返します。おでこの下で脈拍を感じるように意識すると良いでしょう。

    4. 数分間続けることで、気持ちが落ち着き、怒りの感情が和らいでいくのを感じられます。

これは、脳のストレス反応を司る部分(扁桃体など)と、理性や判断を司る前頭前野の間の連携をスムーズにし、感情的な興奮を鎮める効果があるとされています。


3. 体の動きや特定部位へのアプローチ


怒りなどの感情は、特定の身体部位の緊張や硬さと関連していると考えられています。キネシオロジーでは、このような身体的な側面からも怒りの解放を促します。

  • 関連する筋肉の調整: 怒りの感情は、**胸(大胸筋胸肋部)お尻(臀筋)**の筋肉を硬くすることがあるとされています。これらの筋肉をほぐすストレッチやヨガのポーズ(例:胸を開くポーズ、お尻を伸ばすポーズ)を行うことで、身体的な緊張をリリースし、感情の解放を促します。

  • 経絡への働きかけ: 東洋医学の経絡(エネルギーの流れ道)の考え方も取り入れられます。怒りが関連する経絡(例えば肝の経絡など)のバランスを整えることで、感情の調整を図ることがあります。特定のツボを軽く刺激したり、対応するアロマオイルを使用したりすることもあります。


4. 思考パターンの変化と肯定的なアファメーション


怒りの感情は、特定の思考パターンや信念に根ざしていることがあります。キネシオロジーでは、筋反射テストを通じてこれらの思考パターンを特定し、より肯定的なものに置き換えるサポートをします。

  • アファメーション(肯定的な言葉)の活用: 怒りの感情が湧いたときに、「私は許しを与えています」「私は、すべての世界の幸せを祈っています」といったポジティブな言葉を心の中で唱えることで、感情のシフトを促します。

  • 出来事の捉え方の変化: 怒りの原因となった出来事に対して、別の視点から捉え直すことで、感情的な反応を変えていくことを目指します。


キネシオロジーは専門家とのセッションが基本


これらのキネシオロジーによるアプローチは、自分で行えるセルフケア(ESRや特定の筋肉をほぐす運動など)もありますが、より深い感情的な問題や複雑な怒りの根源にアプローチする場合は、**キネシオロジーの専門家(プラクティショナー)**によるセッションを受けるのが一般的です。専門家は、個人の状態に合わせて筋反射テストを行い、適切なテクニックを組み合わせて感情の解放をサポートしてくれます。

怒りは、私たちに何かを伝えようとするサインでもあります。キネシオロジーは、そのサインを読み解き、心身のバランスを取り戻すことで、怒りの感情と健康的に向き合う手助けをしてくれます。


taVNS(transcutaneous auricular Vagus Nerve Stimulation:経皮的耳介迷走神経刺激)は、耳介(耳たぶや耳の軟骨部分)にある迷走神経の枝を体表から電気刺激する非侵襲的な治療法です。この治療法は、主に自律神経系のバランスを整えることを目的としており、その作用メカニズムから、怒りの感情を鎮める効果が期待されています。


当院のtaVNS
当院のtaVNS

taVNSと怒りの感情の関連


  1. 自律神経系の調整:

    • 怒りの感情は、交感神経系の過剰な興奮と関連しています。交感神経が優位になると、心拍数の増加、血圧上昇、筋肉の緊張などが起こり、体が「闘争・逃走反応」の状態になります。

    • 迷走神経は副交感神経系の主要な神経であり、迷走神経が活性化されると、心拍数が低下し、体がリラックスモード(「休息と消化」モード)に切り替わります。

    • taVNSは迷走神経を刺激することで、副交感神経活動を促進し、過剰な交感神経の興奮を抑制することで、怒りの感情に伴う身体的・精神的な興奮状態を鎮める効果が期待されます。

  2. 脳活動への影響:

    • 迷走神経は脳幹にある孤束核(NTS)に接続しており、ここからさらに情動やストレス反応に関わる脳領域(扁桃体、前頭前野など)に情報が伝達されます。

    • taVNSがこれらの脳領域の活動を調整することで、感情の調整能力を高め、怒りの制御に寄与する可能性があります。特に、扁桃体の過活動が抑制され、感情のコントロールに関わる前頭前野の機能が向上することが示唆されています。

  3. 不安やうつ症状の改善:

    • 怒りは、不安やうつといった他の精神症状と併発したり、その背景にあったりすることがよくあります。

    • 研究では、taVNSが不安やうつ症状を軽減する効果があることが報告されています(例:機能性ディスペプシア患者の不安感とうつ症状の改善など)。これらの症状が改善することで、二次的に怒りの感情も鎮まりやすくなる可能性があります。

  4. 痛覚閾値の上昇:

    • 一部の研究では、taVNSが痛覚閾値を上昇させ、痛みを抑制する効果があることも示唆されています。慢性的な痛みや身体的な不快感は怒りのトリガーとなることがあるため、痛みの緩和が間接的に怒りの軽減につながる可能性も考えられます。


現状と今後の展望


現時点では、taVNSが直接的に「怒りの感情そのものを治療する」という明確な研究結果はまだ限られているかもしれません。しかし、自律神経系のバランス調整や脳機能への影響、そして不安やうつ症状の改善といった間接的なメカニズムを通じて、怒りの興奮状態を鎮め、感情のコントロールを助ける効果は大いに期待されます。

特に、怒りが慢性的なストレスや特定の精神疾患(例:PTSD、境界性パーソナリティ障害など)に関連して現れる場合、taVNSは補助的な治療として有効である可能性があります。





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